柴山 敦
(秋田大学大学院国際資源学研究科 教授)
令和6年(2024年)6月の定時社員総会を経て、環境資源工学会の会長を務めることになりました。会長就任にあたり一言ご挨拶申し上げます。
環境資源工学会の歴史は、昭和18年(1943年)に設立された「浮選剤に関する研究会」に遡ることができます。当時は国内の鉱物資源を如何に増産するか、様々な議論、研究が行われていたと推察します。その翌年の昭和19年(1944)年には、現学会の前身となる「浮選剤研究隣組」が発足し、昭和23年(1948年)には、「浮選研究会」へと改められ、昭和29年(1954年)に会誌「浮選」が発行されました。途中、研究会の名称は「資源処理技術研究会」に変わりますが、平成5年(1993年)に「資源処理学会」が誕生します。この頃、ちょうど私自身は大学生で、研究室に配属後、学会誌をちょくちょく目にしていた記憶があります。さらに平成15年(2003年)になると、学会名称が現在の「環境資源工学会」となり、平成31年(2019年)には、一般社団法人「環境資源工学会」に移行しています。この間の私自身の思い出を挙げると、大学院生だった平成7年(1995年)11月に、私が在籍していた九州大学の箱崎キャンパスで第95回の例会があり、開催のお手伝いをさせてもらいました。さらに平成10年(1998年)6月、第100回例会が兵庫県生野町で開催され、この例会にも参加することができました。学生ではありましたが、資源処理学会(当時)を通じ、様々な経験、勉強をさせてもらったことを鮮明に覚えています。
 さて現在の環境資源工学会はどうでしょう。会員数がやや伸び悩んでいるのは事実ですが、学会として扱う範囲は広く、鉄・非鉄やレアメタル、非金属鉱物資源、プラスチック、廃棄物や素材開発、坑廃水処理を含む環境分野など、多岐に渡る内容が当学会の特徴だと言えます。定常的な活動で見ると、年1回の学術講演会とシンポジウムを開催しています。さらに学会誌を年に3回定期刊行しています。このような学会活動ではありますが、産学官の連携も続けていますし、約80年に渡る歴史とともに、多くの関係者によって成り立っていることを忘れてはなりません。
 もう一つだけ付け加えたいことがあります。「環境」は、とても広いジャンルを含みますが、環境と資源学を併せ持つユニークな点がこの「環境資源工学会」の特色だと思います。ご存知の通り、資源学は資源の安定供給や持続可能な社会、カーボンニュートラルを実現する上で欠かせない学問領域です。21世紀後半に向け、環境学はもちろん、資源学の重要性が益々高まることは間違いないでしょう。我々が担う分野は、学問のみならず、社会や資源のサステイナビリティ、地球温暖化対策などに貢献するものと期待しています。学会としてこの使命や責任を果たしていく所存です。また、会員相互の交流や最新動向に触れられる場、あるいは情報収集などに利用できる身近な学会にしていきたいと考えています。皆さまのご支援、ご協力を心よりお願い申し上げ、会長挨拶とさせていただきます。
今後ともよろしくお願い致します。
(2024年6月)